澪はなぜ「バカ律」と言ったのか けいおん!11話の考察
なぜそのような展開を描いたのか,11話の脚本を担当した吉田さんの意図を考えてみました。
11話の脚本の吉田玲子さんは9話でも脚本を担当しています。
その9話でもシリアスな展開がありました。11話でも同じような手法を使おうとしたのではないでしょうか。
最初に梓が切れるところです。
ギターを弾くという当然のことをしたのに怒られ,演奏よりもティータイムを重視する軽音部にやる気が感じられないと文句を言います。
一向にやる気を見せない軽音部に見切りをつけ,外でバンドを組もうとする梓。
9話でもこのままでは梓が辞めてしまうのではという危機が軽音部にはおきていました。
軽音部に戻ってきた梓はメンバーに自分の気持ちをぶつけます。
なぜ軽音部に入りたいのか解らないという梓。
澪のこのメンバーとバンドやるのが楽しいんだと思うという言葉に共感して,軽音部の一員になることを決めます。
このように自分の思っていたのとは違ったため軽音部に違和感を感じ,そこから去ろうとしますが,軽音部のメンバーと一緒に演奏するその場所が自分の居場所であると感じるようになります。
梓は新キャラということで軽音部の空気を乱しても,真面目に演奏したい子が入ってきたらそう感じるだろうなということで許されるものがありました。
しかし11話でまったりとしていた軽音部の空気を壊すのは律と澪です。
みんなが楽器店の中に入るのに入り口でまっていようとする澪。
自分が左利きなので右利き用の楽器を見ていても悲しくなるという澪。
左利きであるゆえに疎外感を感じています。
しかし,レフティフェアをやっているのを見て目を輝かせます。
そして問題の場面。
律に帰るぞと言われて「ヤダ」
律に無理やり引っ張ってゆかれる時に転び「バカ律」と
この澪のらしくない態度ですが,これはレフティと自分を重ね合わせていたからではないでしょうか。
左利きモデルは数が少なく,楽器店の中でもレフティモデルとして一箇所に小さくかためられてしまいます。
軽音部には梓が入部して,いじられ役も澪から梓になり,澪は寂しさを感じている様子が9話で描かれていました。
澪は繊細なところがあります。軽音部の中で疎外感を感じていて落ち込んでいたところに,律のデリカシーのない行動,自分の気持ちをわかってくれないこと,転んでしまった痛さなどが加わり,その気持ちを律にぶつけたのではと思います。
10話で梓が憂に語っていたように律は大雑把だけど澪とはいい感じです。
幼馴染で二人の友情がバンドを始めるきっかけにもなっているように,律にとって澪は特別な関係でもあります。
それなのに,自分とお茶をすることよりものどかとお茶する方を選んだ澪を見て律も疎外感を感じます。
澪はダウナー系のノリで疎外感を示していましたが,律は活動的なせいか異常行動で示してしまいます。
喫茶店にストーキングし,会話に乱入します。
のどかに対しては「うちの澪がいつもお世話になっていま~す」と,「うちの澪」という言葉を繰り返し使っています。
席ではアイスが溶けています。
甘いものよりも澪のことが気になる律の心境を表わしています。
翌日にはお昼休みにも乱入します。
練習するからということで強引に澪を連れ出します。
それでも練習せずに,今度はへそ出し衣装にしようかなとかまってくる律に対して「練習するんだろ」と強い言葉を投げかける澪ですが,律は怒ることなく笑顔です。
この笑顔にかまってくれてうれしいという律の気持ちが表れているように感じます。
結果さらに暴走し,たこ焼き,ポニーテールを炸裂させます。
いつもなら戯れる女子たちに至福の表情を浮かべる紬も,普段と違う律の姿に違和感を感じ,萌えるどころではありません。
そして,「教室戻るぞ」という澪の言葉に,「じゃあ帰れば」と律。
澪が自分から離れてゆくことを恐れることに加えて,自分の気持ち,澪が離れていくように感じている不安をわかってくれないことに対する怒りも含められていると思います。
その後の演奏にも現れていたように律は体調を崩していたようです。そのこともいつも以上に不安を感じたり,気持ちを抑えられなくなる要因になっていたと思います。
ここでも澪の「バカ律」が。
これは澪は律の気持ちをわかってはいますが,律は特別な存在であり,他の友人と仲良くしたからといっても律に対する友情が薄れることはないと考えています。
しかし,律は不安を感じ澪の友情に疑問を感じている,そのことに対する「バカ律」なのではと思います。
練習に来なくなった律の代わりのドラマーを抑えておこうという先生に対して紬は「律ちゃんのかわりなんていません」とめずらしく大きな声を。
9話と同じようにメンバーの不在から,バンドの絆を描こうとしていますが,梓はこれから入ろうとしている人でしたが,律は部の中心的な存在です。
それゆえに視聴者に与えるダメージも大きいです。
お見舞いに来た澪に「怒っていない」と尋ねる律。
やはり自分がバカなことをしたことに気付いています。
「ないよ,あたりまえだろ」と答える澪。やはり,律の一番の理解者です。
律に寝るまで側にいてと言われて嬉しそうにする澪。
お互いかまってくれることを必要としています。
律が軽音部に復帰しLIVEに向けて一つになります。
9話では軽音部に違和感を感じていた梓が軽音部のまったりした空気を壊しながらも,軽音部が自分の居場所であることを認識する話でしたが,11話では澪と律とのあいだの距離感が軽音部の空気を壊すことになります。
澪と律の性格の違いから,お互いの気持ちを十分に理解できていないため問題が起きます。
しかし,お互いの存在が何よりも大事であること再確認することによって元の軽音部に戻ることができました。
けいおん!は萌えアニメだという意見を聞くことがありますが,9話や11話の展開をみると,ただの萌えアニメではなく,思春期の心の動きとか友情とかをたくみに描いています。
萌えだけを求めている人は,今回のような展開に違和感を感じるかもしれませんが。
問題が生じ,それを乗り越え,結束を強くするというのは,よくあるパターンで珍しいものでもないのですが。
今回の展開を通して最終回が盛り上がることになるのではないでしょうか。
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眉毛下がってるし
> 眉毛下がってるし
コメントありがとうございます。
確かにそうですね。
自分でもバカなことをしていることに気がついているからでしょうか。
自分ではかまってもらうことを望んでいても,その手段がフェアなものではないので,心から喜ぶことができないのかもしれません。
乙女心は複雑です。