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ゴールデンタイム 1 春にしてブラックアウト 感想

ゴールデンタイム 1 (電撃文庫 た)ゴールデンタイム 1 (電撃文庫 た)
(2010/09/10)
竹宮 ゆゆこ

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待望の竹宮ゆゆこさんの新作、ゴールデンタイムが登場です。とらドラ!田村くんは大好きな作品なので楽しみにしていました。
帯には「今度のヒロインは完璧なシナリオを描くお嬢様!得意技は独り相撲!輝かしき青春ラブコメの幕開けです!」と。裏表紙のデフォルメ絵は大河にしか見えないのですが……

*ネタバレありの感想です。







登場人物
 主人公:多田万里-上京してきた大学一年生
 ヒロイン:加賀香子-超完璧お嬢様

 柳澤光央-万里の友達
 林田奈々-二年の先輩。リンダ
 岡千波-ほっこりラブリーな森ガール
 二次元くん-三次元に絶望した男
 NANA先輩-カフェで出会う


初めて衝撃を受けたラノベが「田村くん」で、次に「とらドラ!」を読み、残念な出来になりそうな予感がしていたアニメが非常に面白かったので思わずブログを始めてしまったというぐらいのゆゆこファンなのですが、非常に面白かったです。ゆゆこファンとして納得の内容でした。田村くんを読んだ時はすぐに続きを読みたくて車に飛び乗って本屋に向かったのですが、ゴールデンタイムも非常に続きが気になります。

まずは登場人物の感想を。
 多田万里(ただばんり):挿絵を見ると中性的な感じのイケメンです。優男に見えますが行動力、責任感があり、人を助けるために一生懸命な所があります。

 加賀香子(かがこうこ):お嬢様で超美人と外見は完璧ですが、柳澤に執着しすぎです。自分の将来設計に勝手に柳澤を組み込んでいます。その執着心と勝手にポジティブに考えられるところは凄いです。

 柳澤光央(やなぎさわみつお):香子の幼馴染みで王子様。万里にとって大学で初めてできた友達。香子にあれだけ好かれながらも全力で避けています。香子とは別の人生を歩もうとして外部受験しながらも香子がついてきてしまったため問題に巻き込まれることに。香子との距離感が非常に微妙です。

 林田奈々(はやしだなな):通称リンダ。万里の危機を救ってくれた先輩。終盤で万里との関係が明らかに。次巻以降のキーマンになりそうな人です。

 岡千波(おかちなみ):香子とは正反対の可愛らしい女の子。柳澤と仲良くなることによって香子から攻撃されることに。1巻ではまだ可愛いだけの女の子という感じで出番は少なめです。振り回され、とばっちりを受けるポジションになりそう。

 二次元くん(本名は佐藤):三次元に絶望したといっても、歓迎コンパで絶望しただけで、二次元にそれほど強い執着があるわけでは。2chの住民に比べればかなりライトです。

 NANA先輩:まだ謎の存在です。ライブハウスにご招待と大学編ならではのキャラです。これからの使い方に注目です。


ストーリー
 物語は主人公が上京して一人暮らしを始めるところからスタート。
 初めてできた友達の柳澤は異性関係のトラブルのため付属校から外部受験してこの大学に。
 その柳澤を襲撃する形で加賀香子が登場。この女から逃れるために外部受験していましたが、追いかける形で香子も同じ大学に。

 大学ということで物語の最初のイベントはサークル勧誘です。新生活で初めて体験することと、香子と光央の複雑な関係に巻き込まれる形で展開してゆきます。
 柳澤に避けられているので友達の万里に接触する香子。圧倒的な美人&お嬢様ということで大学で浮いている香子に同情し親しくなっていく万里。この二人の関係が1巻では中心になっていました。
 舞台が大学ということでサークル勧誘のことがリアルに書かれています。初めて香子に声をかけてくれたサークルの合宿に参加することになるのですが、声をかけてきたのがこの大学の人では無いということで、かなり怪しいサークルなのですが、巻き込まれてしまい大変な目に遭うことになります。でもこれが香子と万里の距離を縮めるイベントになっていました。


 文章の特徴としては、幽霊視点で章の最初の部分が語られることです。彼の名前も多田万里。高三の卒業式の少し後に橋から落ちて記憶喪失になったというのが鍵になっていそうですが。手の甲の「わ」だか「れ」の文字も気になるし。この自分に関する記憶が無い、消えた自分という設定をどのように生かしてくるのかが気になりながら読んでいました。

 ゆゆこの魅力の一つに登場人物の心理状態、心の動きを丁寧に描くというのがあるのですが、万里の香子に対する印象は変化してゆきます。最初は変な女として見ていましたが、彼女の孤独に気がついてからは救ってあげたいという気持ちに変わってゆきます。
 柳澤といる時の香子とそれ以外の香子の雰囲気の違いに気がついたり、阿波踊りに苦戦する意外な姿などを見たり、一緒に行動しているうちに惹かれてゆく一方で、香子ではなく千波を見ている柳澤に対して苛立ちを感じています。

 一番大きく変化したのは香子でした。香子は幼馴染みの光央との間に勝手に人生設計を立てていて、そのシナリオ通りに生きることを強要し、光央に近づく千波に嫌がらせをしていました。それでも自分と光央との間には運命がある、必ず結ばれることになるということを全く疑っていません。
 柳澤と一緒にいる時が本当の自分と考えていますが、起きる出来事を通して変化してゆきます。そのことが最初に語られたのが、脱走劇の後の「一割」の時ではないでしょうか。その事件の後、柳澤を避けるようになる香子。


 香子が叩きつける赤い薔薇の花束や、ローズピンクのスカートの裾を翻す姿はマタドール、戦う強い女性の姿をイメージさせます。
 しかし、柳澤が惹かれるようになるのはアニメ声の可愛い女の子、岡千波。香子と正反対のタイプの美少女です。
 柳澤と千波が話しているのを見て、自分をコントロールできなくなり怒りをぶつけてしまうことにより、さらに溝を深くしてしまいます。外見は完璧に見えながらも、恋愛、柳澤とのことに関しては思いっきり不器用です。
 完全な思い込みで行動。好きになった子や友達に嫌がらせとアメリカなら裁判所から接近禁止令が出されてもおかしくないレベルです。それでも香子のことを大事だと思っているからこそ、柳澤は一緒に時を過ごしてきました。それは好きとは違う感情、幼馴染みとしてしか見ていません。でも香子は自分は柳澤にとって特別な存在であると信じ込んでいる。二人は結ばれ永遠の愛を誓い合うことを疑っていません。

 その気持ちのすれ違いが完全に明らかになり違う道を歩むことになる二人。救出劇によってリンダ先輩のサークルに一緒入ることによって万里と香子の距離は近づきますが、柳澤とは離れていくことに。

 そこに登場するもう一人のNANAさん。
 柳澤との関係が完全に終わってしまったことのショックから、今までの自分なら絶対しないことをして、柳澤と歩んできた道を無かったことにしたい香子。酔っぱらった状態でNANAさんから招待されたライブハウスへ。その危なかっしさを見てますます放っておけなくなる万里。

 しかし、完璧に振られることによって自分を見つめ直すことができるようになる香子。自分が完璧だと思う形に人を押し込もうとしていた。それが自分の理想の彼女を相即する二次元くんとやっていることが同じだと気がつきます。
 この拒絶されることによって自分たちが似ているということに気がつきます。二人とも以前の自分を、万里は記憶喪失によって、香子は柳澤との日々を否定されることによって。本当の自分というのは……

 そんなお互いに最悪の状況での万里から香子への告白。

 そして翌日、静岡に行く万里。一晩あけて昨日のことが恥ずかしくなり逃げてきました。
 それでもメールでの香子の励ましによって、以前の覚えていない自分を受け入れようとする万里。
 段ボールにしまい込んだアルバムを目にすると、そこにはリンダ先輩と一緒に写っている写真が!二人はクラスメートであり、とても仲良くしています。
 思わず自分が落ちて記憶を失った橋まで走る万里。そこでプロローグとのシンクロが!
 そして登場人物がすべて揃いブラックアウトするラスト……

 ということで終盤に急展開があり、続きが気になります。


作品の方向性や特徴
 挿絵:読んでいて挿絵がないことに気がつき驚きました。章の最初に小さく人物画が入るだけの挿絵です。
 イラストもこれまでのヤスさんから駒都えーじさんになったということからも、路線変更を視野に入れていると思います。挿絵の入れ方、舞台が大学と、ティーンエイジャー向けのラノベというよりも、一般小説を意識したものになっています。アニメや漫画でのメディアミックスよりも、TVドラマ化が似合いそうな内容です。ゆゆこ流トレンディドラマといった感じでしょうか。

 タイトルに「ゴールデンタイム1」とあるように次巻以降も見据えての展開となっています。構成も凝っていていくつもの謎があり、それはこの巻では明かされません。
 とらドラ!では売れることを意識した内容、設定になったいましたが、ゴールデンタイムはゆゆこが書きたいものを書かせてもらっているという感じです。とらドラ!が大ヒットしたことによってそれだけの自由を得ることができているのではないでしょうか。内容が大人向けというか設定も複雑になっているため、2巻は来年の春頃とあとがきにあるように書くのにも時間がかかりそうです。結末まで視野に入れて書かれていると思うので全体としての完成度はかなり期待できるのではないでしょうか。

 発売前はあらすじや前情報から、大学版とらドラ!とか、同じような設定展開になるのではと言われていましたが、大学が舞台ならではの特徴が表れていました。
 大学ということで、学園生活というよりもサークルでの仲間との絆が中心になります。学園ならではの共通イベントも少ないです。そのためお約束的なイベントを入れられない分、大学生活ならではのものを入れてきていました。
 もう一つの問題点は恋愛をどう描くかという点です。中学、高校とは違って登場人物は大人です。大人の恋を描く必要がありますが、ラノベでどこまでやるのでしょうか。次巻以降恋愛面での進展もあると思うので、その描き方に注目です。
 ギャルゲのメモオフは高校が舞台のものと大学が舞台のものがあって、やはり同じギャルゲでも描き方が異なっていて、大学編の3と5は評価が大きく分かれています。ドロドロとした恋愛を展開させてくれたりするのでしょうか。

 大人の読者からすると非常に満足のゆく内容でしたが、中高生から見るとどうなのかが気になります。これがどのくらい受け入れられるかによって、どれだけラノベを大人向けにシフトするのかが見えてくるのではないでしょうか。
 最近ではラノベ作家が一般向けの小説を書くようになってきていますし、電撃には一般向けで新聞にも広告も出しているメディアワークス文庫もあります。電撃はラノベ界の最大手なのでその動きというか傾向にも注目です。

 最近は次巻の関係でラノベの新刊を買ってきてもなかなか読めなかったり、感想もブログに書くことができなくなっているのですが、ゴールデンタイムは全力ですぐ読んで感想を書くようにします。それだけ最優先したくなるだけの作品でした。今後の動きにも注目してゆきます。


電撃文庫&電撃文庫MAGAZINE
電撃の新刊の中では一番上に来ているゴールデンタイムですが、うちの近所の本屋では、ホロ、電波、ホライゾンの次という扱いでした。


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2010-09-10 18:39 : Book : コメント : 0 : トラックバック : 0
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