僕の妹は漢字が読める 感想
![]() | 僕の妹は漢字が読める (HJ文庫 か 6-1-1) (2011/06/30) かじいたかし 商品詳細を見る |
そのタイトルと試し読み部分の内容のインパクトで話題になっていました。
表紙の帯に「おにいちゃんのあかちゃんうみたい」と書いているし。
試し読み部分は面白いのですが、そこがピークだったような感じが。
ネタバレになるので感想は追記で。
最初は「僕の妹は漢字が読めない」と勘違いしていて、ちょっと頭が残念な妹が「ふにゅう おにいちゃんかんじがよめないよ~」みたいな話だと思っていたのですが、「漢字が読める」で漢字が衰退した23世紀が舞台になっていて、その設定が生かされています。
「おにいちゃんのあかちゃんがうみたい」
「きらりん! おぱんちゅ おそらいろ」
「いもうと すた☆あ」
これが23世紀の正統派文学になっていて、ぱんちらや脱衣が文学的表現として認められています。首相も二次元美少女になっているぐらいです。
今の萌え文化がこのまま進んだ未来を舞台にしているというのが面白く、萌えエロに特化しすぎw と批判されている今のラノベを世間の常識にし、これは酷いw というラノベを正統派文学にすることによって、今のラノベを揶揄しています。
その後、主人公たちは、近代(21世紀)にタイムスリップしてしまうのですが、そこからパワーダウンしています。もっと23世紀と21世紀のギャップという設定、価値観の相違を生かした方が面白いしいと思うのですが。
主人公たちが21世紀に行くよりも、21世紀の文芸部員が23世紀にタイムスリップしてきた方が盛り上がったような気もします。
未来の文学の酷さをもっと楽しみたかったのですが、時間移動によるバタフライエフェクトを終盤にもってきたりして何を売りにしているのかがいまひとつわかりにくくなっていました。そういう展開をこのタイトルで購入した読者は求めていないと思うのですが。
「僕の妹は漢字が読める」というタイトルのインパクトと舞台が未来という設定をもっと前面に出した方が面白かったような気もします。もっと攻めた方が、良い意味で酷くした方が楽しめたと思います。
未来という舞台設定、作中作を書く必要があるということで新人さんには設定的に難しかったような気がします。
ある程度ラノベを書いている人がこの設定で書いていたらもっと面白くなっていたのではないでしょうか。
それでも冒頭のインパクトだけで十分読む価値はありました。
各所で話題になっていましたが、ここがピークでした。
これが大先生の書いた新作。
主人公はこれを読んで驚愕します。
あまりの酷さに、使い古されたパターンに驚愕するのだと思っていたら、漢字が読めないので文章を読めなくて驚愕していたというオチです。
そこで本来の原稿、現代文で書かれたものを見せてあげるのですが、それがコレです。
さらに酷くなっていているというオチ。これが未来の正統派文学だという現実に読者が驚愕できる仕掛けになっています。
試し読み部分は読む価値大いにありです。こういう手法もアリなのか! と感動しました。
こういうラノベならではの手法、これは酷いw と言われている萌えエロラノベを逆手に取ったことは評価したいと思います。
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