氷菓 第1話 「伝統ある古典部の復活」

「気になります……。わたし、気になります」
「高校生活と言えば薔薇色」
でも薔薇色の高校生活ではなく「灰色」を好む折木奉太郎。
勉強にも部活にも恋にも後ろ向きの奉太郎。
これが最初の奉太郎の立ち位置。
やらなくていいことはやらない。やるべきことなら手短にという省エネがモットーです。
そんな奉太郎ですが、古典部に入部することに。
古典部OBである姉の居場所を守るためでした。
この学校は三年間部員ゼロなら廃部なのでかなり緩やかで小さな部活がたくさんあります。伝統的に文化系が充実しています。
職員室に入ったときに先生が重い荷物を持つのを見て、職員室からすぐに出る奉太郎。
荷物持ちをお願いされたら困るからです。この行動に省エネ主義が現れていました。
誰も部員がいないから部室を独り占めできる……
そう思っていたら先客が。
OPでは灰色から薔薇色になる演出が。
千反田えるは古典部に入部しています。
それなら自分の役割は終わりと帰ろうとしますが、千反田は鍵を持っていないと。
しかし、奉太郎が来たときには鍵がかかっていました。
距離近すぎ。千反田の癖なのですが
なぜ鍵が勝手にかかっていたのか……というのが最初の事件。非常に地味です。
でもヒントは出ています。
奉太郎がここにくるときにすれ違った人、足下から音がすると言う千反田の言葉。
あっさりとした謎解きでしたが……。
里志の挙げたファミリーも今後登場してきます。
この建物だけが古いわけも。
Bパートでは短編集のネタが。
時系列順に進むようです。
音楽室から流れてくる月光の怪談話です。
ピアニストがいないのに流れる曲、乱れ髪の女子部員。
京アニにしては珍しいタッチの絵が。
この話を里志が千反田から聞いたということで、千反田の「わたし、気になります」を恐れる奉太郎。
それで先に秘密クラブの勧誘のネタを千反田にふります。
そこで里志が話したのが「女郎蜘蛛の会」
存在が確認されていないのにひそかに存在し勧誘をかけています。
それで、勧誘メモを探しに行くことに。
「不慣れな人ほど奇をてらう」
上級者は裏をかいてあえて一番目立つ場所に貼ると。
たくさんある部活は文化祭の話の時に活躍します。
ポスターからは「薔薇」の文字が。
こうした部活で青春することは薔薇色の象徴です。
野球部のポスターの下で発見。
これを貼るところとか、画鋲のゲットといったところを後から出すとは。
06021722LL の意味は不明です。
これは千反田の興味をさらすための奉太郎の自作自演だったのですが、そうした理由が例の音楽室の場所が遠いから……。
それですぐに帰れそうな謎を作ったのですが、一番良い方法は関わらないことだと里志に言われます。
知らず知らずのうちに千反田と関わることになっている奉太郎でした。
音楽室の謎も部員が寝ていただけ。月光は目覚まし代わりのタイマーだったと。
こういう題材が地味な話をどのようにアニメで盛り上げてくれるのかに注目です。
原作ファンからすると丁寧なアニメ化に喜べます。
しかし、アニメの1話としては微妙な作りでした。
原作を読んでいないとわからない点が多すぎな感じです。
千反田えるのキャラを前面に出してきている感じですが、作品のストーリーがわかりにくいのでは。
えるの声も清楚なお嬢様というイメージとは少し違う感じが。清楚さよりも可愛さの方を全面に出しています。お嬢様成分が足りません。
最初の出会いのシーンもボーイ・ミーツ・ガールを印象づけさせていました。
演技も生徒会役員共のアリアよりの方が良かった感じが。(G線上のアリアが流れていました)
基本的に生真面目なんだけど少しズレている、天然な感じのボケが良いのですが、ちょっと狙いすぎの感が。
相手に近づきすぎてしまうという癖を持っているのですが、あからさますぎでした。
奉太郎が千反田に興味を持つのも早すぎる感じが。この頃は面倒な相手としか見ていないのですが、興味を惹かれすぎです。灰色から少しずつ薔薇色になってゆくのに。
初対面だというのにこんな迫まり方をしたら……
やり過ぎな感が。奉太郎が恋愛感情から謎解きをしたみたいに捉えられてしまうし。
原作では謎を解くためのヒントが所々に置かれ、それから答えを導き出すという方式なのですが、謎解きの描写部分があっさりしすぎです。謎といっても小さな地味なものなので学園ストーリーの方を重視している感じです。
氷菓の古典部シリーズは一般ミステリーに対するアンチテーゼが使われています。
王道的、古典的なミステリーにあえて逆らっています。
殺人も派手な事件も起きません。探偵役が出しゃばったり、自分の頭脳を誇ったりもしません。複雑なトリックも使われませんし、サスペンス展開も超自然的なミステリーも発生しません。
探偵役である奉太郎も、一般的なミステリーの探偵役とは違うタイプです。
1話としての掴みはいまひとつでしたが、タイトルである「氷菓」が出てくる当たりからは盛り上がってくるのではないでしょうか。
米澤さんは角川学園小説大賞のヤングミステリー&ホラー部門でデビュー。
しかし、この部門は余りやる気がないみたいで全6回実地され、受賞した5作品のうち、刊行されたのは3作品。
角川スニーカー文庫の編集部も色々と悪い噂が多いのですが、氷菓に対する編集部の戦略も問題があったのではないでしょうか。
最初に出版当時の氷菓の表紙は、学園小説を読みたい層が手に取りたいと思うようなものではありませんでした。
氷菓も次作の愚者のエンドロールも売れずに、米澤さんは本を出すことができない状態に。
しかし、創元社から出した作品が高い評価をされ、ミステリー作家として認められるようになります。
それで、氷菓と愚者も角川文庫から再出版されるようになり、古典部の続きも出るようになります。
古典部シリーズ第三弾のクドリャフカの順番のあとがきで書かれているように氷菓からクドリャフカが出るまでに7年もかかってしまうことに。
今回の京アニによるアニメ化もこれまでの扱いに対する角川側からの謝罪の意味も含まれているのではと邪推してしまいます。
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