氷菓 第5話 「歴史ある古典部の真実」

-好奇心の猛獣,千反田-
「推理でもして,一枚噛みたかったのさ。お前らのやり方にな」
省エネ主義者から自ら謎解きをするようになってきている奉太郎。
里志や千反田の薔薇色の青春に加わりたくなってきています。
ここで雨が止んで光が差し込むことによって,奉太郎の中では事件解決したことが示されます。
奉太郎が薔薇色で思うものは千反田のこと。
ピンク色のフィルターがかかっています。
アニメオリジナルシーンですが,奉太郎が千反田のことを気にしていることが示唆されていました。まだ薔薇色を恋愛とは直接結びつけてはいないようですが……
しかし,姉からの電話で考え違いしていることに気づきます。
カンヤ祭は禁句,あれは悲劇,嫌だったと。
「きっと十年後,この毎日のことを惜しまない」という姉からの手紙。
関谷純も同じ気持ちだったのかと,もう一度考え直す奉太郎。
本当に英雄として自ら高校を去ったのか?
姉貴はあれを悲劇と呼び,氷菓第二号でもあれは英雄譚ではなかったと。
犠牲と書いて生け贄ですが,古代宗教では救いや許しを得るために動物の命(時には人間の命)を犠牲として差し出すことをしてきています。
糸魚川先生が,氷菓第二号の序文を書いた郡山養子でした。
2話で郡山先生が登場したとき,名札をしっかりと映していたのはこの伏線でした。
原作では33年前なので48,9歳なのですが,アニメではさらに年老いてしまうことに……
真相を確かめるために糸魚川先生に突撃。
「俺が訊きたいことは一つです。関谷純は,望んで全生徒の盾になったんですか」
語られる当時の出来事。
校長が打ち出す文化祭の縮小計画。それに抵抗する生徒たち。
でも処罰を恐れて,リーダーにはだれも立候補しません。
そこでリーダーに担ぎ上げられたのが関谷純。
運動を盛り上げるためのキャンプファイアーの火が格技場に飛び火。
火を出したということで問題をうやむやにできず,見せしめとして処罰の対象になったのがリーダーの関谷純。
1話で千反田が窓から見ていた古い建物がこの火事によって建て直されています。
それで定められた耐用年数を超えていないということで,立て替えの対象にならずこの格技場が古いまま残っていました。この建物だけが古いというのが複線になっていました。
文集の表紙のイラストのことも明らかに。
犬が学校側,犬を巻き込んで道連れにしたのが関谷純ですが,噛まれて犠牲になっています
他のウサギは外から遠巻きに眺めているだけです。
カンヤ祭は神山からではなく,英雄となった関谷から。
でも真相は英雄ではなく犠牲なのでことの顛末を知っている古典部員はその名前を使いません。
「氷菓」のタイトルは退学が決まりそうになった関谷純が無理を通して決めたタイトル。
意味はよくわからないという糸魚川先生。
関谷純はそのタイトルをつけることによって古典部の末裔までに自分の思いが伝わるようにメッセージを込めていました。
氷菓を英語にすると Ice Cream → I Scream(私は叫ぶ)
ついに自分が泣いた理由を思い出す千反田。
「ひょうか」とは何のことかを叔父に聞いた千反田。
「強くなれ……もし弱かったら,悲鳴も上げられなくなる日が来る。そうなったら生きたまま……死ぬことになる」
漫研ということで文集作りには手慣れている摩耶花。
それゆえに後に悲劇が起こるのですが……
「10年後の私は気にしないのかもしれません。でも,今感じた私の気持ち,将来どうでも良くなっているかもなんて……今は思いたくないんです。私が生きているのは今なんです。だから……」
アニメでの追加シーンでした。
姉からの手紙の10年前を千反田の台詞と絡めています。
これによって奉太郎と千反田の今の高校生活に対する見方をクローズアップさせ,関谷純がどんな思いで高校生活を振り返ったのかということを結びつけています。
姉貴がどういうつもりで俺を古典部に入らせたのかと手紙を書く奉太郎。
「古典部に入らなければ省エネのスタイルを見つめ直すこともしなかった」
古典部に入ることによって灰色から薔薇色へと変化することになる奉太郎。
そうするために姉が奉太郎を古典部に入れ,氷菓の謎を探らせることによって,青春させることにした……今回の件は姉の策略,裏で糸を引いていた,古典部のことを全部知っていたというのがわたしの解釈です。
深読みすると,欠けていた氷菓第一号を隠し持っているのも姉で,姉はベナレス(インド)から最初の手紙を書いているので,インドで関谷純と出会っていたという仮説も成り立ちます。
今の所原作では関谷純は今後登場していませんが,氷菓,古典部と深く関わりのある人物なので今後登場することはあるのか?!
姉は黒幕臭がするのですが,次巻の「愚者のエンドロール」では帰国しています。アニメでは登場シーンがあるのか?!
次回は「大罪を犯す」
短編集の「遠まわりする雛」の中の話です。
7話が温泉旅行の話ということなので,「大罪を犯す」だけで1話費やすのか。
個人的には微妙な話だったので,これをアニメでどれだけ面白く描いてくれるのかに期待です。
「氷菓」は余りアニメ受けしない内容で,小説として読んで楽しむ系の作品なので,京アニがどこまでやってくれるのか期待半分,不安半分だったのですが,5話の出来は素晴らしかったです。
前回はストーリー展開がかなり早足だったのですが,今回はかなりわかりやすく描いてくれていて,原作を読んでいない人にも理解できる内容になっていたのではないでしょうか。
氷菓→Ice Cream→I Scream
という駄洒落がタイトルと関係しているのですが,奉太郎が「下らない駄洒落だ」と言いながらも,それが単なる笑いをとるための駄洒落なんかではなく,そこに込められた関谷純の気持ちをしっかりと描いていました。
関谷純を見捨てる生徒たち,あげることができなかった叫びとその無念な気持ちが描かれていましたが,この辺の原作理解力は流石です。
弱かったら悲鳴もあげられなくなるという言葉の意味を押さえていましたし,そのことを踏まえて関谷純の姿を大人しくて言いなりになりそうなタイプのキャラとして描いていました。
関谷純にとって,高校生活は苦い思い出,黒歴史となっています。
だからこそ,千反田にはそうなって欲しくはない。
千反田を気遣う余裕もなく,本心をストレートに告げたため千反田が泣くことに繋がることになりました。
原作では氷菓の副題として You can't escape がつけられていました。
本の感想を書いたときはこの言葉の意味が千反田の好奇心から逃げられない奉太郎(アニメでも髪の毛に絡まる奉太郎が描かれていました)と,姉の奉太郎薔薇色作戦から逃げられないことだと理解していたのですが,アニメを見て,当時の暴動と貧乏くじをひかされることから逃げられなかった関谷純のことも指しているのではと思いました。
原作既読者でもさらに理解を深めることができるだけの作りをしてくれています。
最新版の文庫本では Niece of time という副題がつけられていますが,こっちのタイトルだと関谷純の姪(Niece)である千反田が叔父の過去を探ることによって真実を知ることになるということに焦点が当てられています。
関谷純の生きた歴史がテーマとなっているので,原作の「氷菓」は千反田と関谷純の物語であると言えるのではないでしょうか。
事実を知って涙を流す千反田の演出にも心打たれました。
原作での最大の山場なのですが,アニメで見ることによってさらに理解を深めることができました。
原作を読んだときには,小さい頃の自分の涙を思いだし,探し求めていた真実にたどり着いたことで涙を流していたと理解していたのですが,千反田が幼い頃に泣いた「生きたまま死ぬ」そのことが,よりにもよって関谷純の身の上に降りかかることになってしまいました。
インドで行方不明になり,葬儀をあげ,法律上は死んだことになる関谷純。
まだ生きているかもしれない,まだ死亡が確認されていないのに死んだことにされてしまいます。
恐れていた「生きたまま死ぬ」がよりにもよって関谷純の身に降りかかることになります。
原作既読者を満足させ,様々なことに気づかせてもくれる京アニの表現力は流石です。今回の5話で京アニに対する評価を大幅に上げることになりました。
千反田の願いを叶えたところでピンク色のフィルターが。
アニメだと奉太郎と千反田の関係が強調されています。
映像的に推理よりも恋愛描写の方が盛り上がるだろうという考えだと思いますが,恋愛要素をどこまで描いてくれるのかにも期待です。
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