氷菓 第7話 「正体見たり」

「一緒に出ましょうね」
温泉に行こう!
時期は夏休み。
氷菓事件が解決したということで,みんなで温泉に。
摩耶花の私服が可愛い。
旅館の娘の善名姉妹。摩耶花の親戚です。
眼鏡が姉の梨絵,妹の嘉代。原作では中二と小六でしたが,アニメでは小六と小四に。
この二人と並ぶと摩耶花は同年代に見える……というか並ぶと妹の方に見られるということだったのですが,アニメでは姉妹の年齢を下げたことで高校生のお姉さんとしての面目を保つことが。
お椀をこぼす嘉代。梨絵の手がぶつかったせいであって,どちらにも責任がありそうなのですが,叱るのは姉の梨絵で謝るのは嘉代。この辺に二人の力関係が表れています。
「ここ,混浴じゃないようですね」
「どこへ行くんですか?」
「お前と同じだ」
「ここ,混浴じゃないようですが」
「湯船まで同じだとは言っていない」
原作ではこのようなやりとりに。
千反田は混浴ではないことを知っていたのですが,混浴でも構わなかったようなニュアンスに。
お風呂での隠し方は「ふもっふ」の温泉回を思い出させますが,それを男でやるとは……
隣から聞こえる音で千反田の入浴姿を思い浮かべてしまう奉太郎。
ここまでエロく妄想するとはピンク色に侵されています。
外からは太鼓の音が。そして,外に出て行く物陰が。
7号室の首つりの階段話が聞こえてきます。
翌朝,摩耶花は向かいの窓に首つりの影を見たと。
名前が書かれているのは梨絵のカップだけ。嘉代のはありません。
嘉代は例の怪談の話を知りませんでした。
千反田も同じものを見たと。
それで,何を見間違えたのかを調べることに。
このチャンスに女子の部屋に入るのかと思ったのですが,奉太郎の部屋に。
原作だと里志はいなくて二人きりなのですが……
7号室のある本館二階は物置に。
一昨年までラジオ体操に通っていたという千反田さん。スタンプカードには梨絵のだけに名前が。
この髪型も可愛いです。
浴衣姿を見せに来る梨絵。
帯はイミテーションです。JSの浴衣にも詳しい里志。
里志の話から,昨夜は夏祭りがあったこと,両手に花にも一輪余るから,女性陣が三人であったこと,そして急に降った雨……。これらから理解した真相を千反田に語る奉太郎。
嘉代は梨絵の浴衣を勝手に借りて夏祭りへ。
雨が降って濡れてしまったのでこっそり乾かすためにハンガーに。風通しを良くするために窓を開けていたので,それを見た摩耶花が首つりと間違えたわけです。
自分のものにはしっかりと名前を書いて区別している梨絵に,嘉代は浴衣を貸してとは頼めなかったと。
そんな姉妹の関係にショックを受ける千反田でした。
ラストシーンについては後述します。
次回は「試写会に行こう!」
「愚者のエンドロール」の話に。
女帝こと入須先輩が登場です!
氷菓はミステリー要素が薄かったのですが,愚者のエンドロールはミステリーとしてもかなり面白く,わたしはこれで米澤さんにはまるようになりました。楽しみにしています。
温泉と殺人事件は相性が良く,ミステリーの定番となっていますが,古典部シリーズなので殺人事件は起きません。夜中に見た幽霊が,実は犯行シーンだった……というのがありがちなパターンですが,事件は起きていないので,何で見間違えたのかを探ることになります。
入浴シーンだけに力を入れるのではなく,見間違えた理由を探る過程や千反田と奉太郎の距離感をしっかりと描いていて,予想以上に楽しむことができました。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」:
このことわざが今回のキーポイントになっていました。
怖いと思っていると,何でもないものまでが,とても恐ろしいものに見えてしまいます。
枯れ尾花は枯れたススキのことで,ススキの穂がしっぽに似ているのでそのように呼ばれています。
それで,幽霊だと思っていたものでも,よく見ればそれは枯れたススキの穂であることに気づき,正体がわかってしまえばそんなに怖くない。先入観による思い込みの危険を示しています。
今回はこの言葉が摩耶花の見た幽霊と千反田の見た善名姉妹の両方にかかっています。
摩耶花の見た幽霊はハンガーに吊された浴衣を身間違えだけでした。
前夜の怪談話のせいもあって,幽霊に見てしまいます。
千反田は善名姉妹を見て「きょうだい」が欲しかったと。気の置けない相手がいつも側にいるなんて,素敵だと。
善名姉妹を見て仲のいい姉妹だと思い込み,憧れます。
姉か弟が欲しいといっていたので,妹の嘉代に感情移入していたと思います。
でも浴衣の真相を知って,浴衣を貸し借りできないなんて,とても気の置けない関係とは言えない,姉妹の姿を見てしまいます。
理想的な姉妹だと思っていた二人も,よく見るとそうでもない,遠慮や仲違いがあると言うことを知って落ち込む千反田。
「でも,きっと,わかっていたんだと思います。首つりの影は幽霊なんかじゃありません。そして,世の中のきょうだいがみんな,心から楽しみあえるかといえば……」
原作での千反田の台詞。幽霊が見間違えであることは最初から千反田は気がついていました。気になっていたのは,何と見間違えたか。同じように,千反田の考えているきょうだい像も,よく見ればそんな理想的なものではないことに気がついています。でも,そういう理想的な関係に憧れています。そういうものであると信じたいと思っています。
でも,それは幽霊のたぐいのようなもの……
影の中で立ち止まる千反田の姿が,幽霊の影と表には見えない姉妹の影の部分を象徴しています。
そう考えていたときに目に映るのはふたりに手を振っている梨絵の姿。
目に見えているものと実際の関係のギャップを示す構図になっていて,それがほろ苦さを与えるのですが,アニメ版では少し改訂が。
「千反田の望むきょうだいというのは枯れ尾花なのかもな」
姉を持つものとして,外から見て理想的に見えても,実際には……ということを知っている奉太郎。
でも目に映るのは妹を気遣い背負う姉の姿。嘉代のサンダルの鼻緒が取れていました。
「ま,枯れ尾花ばかりではないかもな」
それを見てそう呟く奉太郎。
仲が悪いように見えるところがあっても,よく見ると心の底ではお互いを気遣っている,という結論に。
それを見て笑顔になる千反田。救いを与える結末になっています。
千反田が姉か弟が欲しいというのは,奉太郎に姉がいることが関係しているようです。
姉のいる奉太郎の気持ち,奉太郎が弟である姉の気持ちに自分を重ねています。
つまり,奉太郎と気の置けない関係になりたいという千反田の潜在意識が。
わたしにもきょうだいがいますが,仲は良い方で気の置けない関係なのですが,それでも色々とあります。
うちは服の貸し借りはOKでしたが,それが喧嘩の原因になるところも多いです。
きょうだいがいるということには良い側面も悪い側面もあり,どちらも真実なのですが原作では暗い面を映しだし,アニメでは明るい面を描いていました。
千反田の「わたし気になります」も,ただ答えを知りたいというよりも,なぜそうなのか,奉太郎がどう推理するのかを知りたくなってきている感じがするし,ふたりの距離はだいぶ近づき,気の置けない関係になりつつあります。
そういえば,「袋のねずみ」が登場しませんでした。
「あきましておめでとう」の複線になるのに。
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