氷菓 第18話 「連峰は晴れているか」

「折木……あんた帰った方がいいわ。暖かくして早く寝なさい」
俺,気になるんだ。
千反田家のしいたけはクラシックを聴かせて育てていると。
「遠まわりする雛」とリンクしています。
里志の人工の雷の話ですが,雷の落ちたところにはキノコが生えるという言い伝えがあります。
雷によって窒素ができるので食物の成長に貢献するのですが,人工の雷はどうなのか。
「そういえば小木がヘリ好きだったな」
空飛ぶヘリを見て中学校時代の小木先生を思い出す奉太郎。
小木の名前から,この学校の小木のことを語る千反田。「ふたりの距離の概算」の大日向が恐れそうですね。
中学校時代の話で摩耶花がクールなのは野生時代に掲載された古典部シリーズの最新作と関連しているという噂なのですがわたしはまだ未読です。
小木先生が授業中に突然窓に駆け寄ってヘリを見ていたと。「ヘリが好きなんだ」と笑って誤魔化していたと。中学に入学してすぐ頃の話。
でも里志は自衛隊のヘリが編隊を組んで飛んできたときには無反応だったと。ヘリ好き情報と矛盾します。
里志が小木伝説を。雷に三回打たれたことがあると。
宝くじの一等に当たる確率が,雷に当たる確率と同じとよく言われるのでかなりのレアケースです。
そのこととヘリのことを推理して結びつける奉太郎。しいたけの話をしっかりと聞いていたんですね。
雷に打たれる&ヘリといえば連峰での登山ですね。
奉太郎に好奇心を抱かせるものがあるとは,ということで大いに気になる千反田。
二人乗りをやって欲しかった。
薔薇色の学園生活です。
「二人乗りでもいいですよ」というのは奉太郎を婿に迎えることの暗喩。
奉太郎が千反田を後ろに乗せるのは「いや,無いな」と言っていたように千反田が嫁に来るというのは無い話で,奉太郎が婿入りすることを示している。「やっぱり先に行っててくれ」という奉太郎の言葉は二人が結ばれるのがまだ先のことを示している……という穿った見方をしたくなります。
図書館に向かう途中で見える連峰。
新たな聖地巡礼場所が。雷オフが行われるのか。
小木先生は神山山岳会の団長をしていました。
3年前の4-5月の新聞記事の中から「遭難」をキーワード検索してもらう奉太郎。
神垣内連峰で遭難が発声し,捜査が難航しているという記事が。
並べて置かれた鞄がふたりの距離が急接近していることを示しています。
ふたりの会話は一般的な高校生のものからかけ離れていましたが……
3年前の5/9の新聞には神山山岳会員2人が遭難したと。
小木はヘリコプターが好きなんかじゃなかった。
2人の捜査活動を気にしていてヘリに注目していたのです。
連峰が晴れていれば救難ヘリが飛ぶことができます。
何日か先の新聞で2人の遺体が発見されます。
「どうして今日だけは自分の疑問を調べたのですか?
なぜ奉太郎がこの件を気にしたのかを尋ねる千反田。
里志の雷の話を聞いて嫌な連想を浮かんだからと。その連想が当たっているどうかを調べるために図書館に。
「連想が当たっていたら気をつけないといけないからな」
「実際はああいうことがあったのに,小木はヘリが好きだったなぁと気楽には言えない。それは無神経ということだ。そりゃ流石に気をつけるさ」
「折木さん,それって……とっても……」
「……うまく言えません」
今回千反田の助けを受けたことで「借り」と感じる奉太郎。
この借りを返すことが「遠まわりする雛」につながるのか。
次回は「心当たりのあるものは」
ミステリーとしては面白いのですが,映像化が最も難しい回が登場です。どのような演出を見せてくれるのかとても楽しみです。
奉太郎と千反田が喋っているだけの話なので,ふたりの距離が接近した後に持ってくるのは良い構成です。
原作は未読ですが,非常に短い話だと聞いています。
原作未読だとこれくらいのボリュームが1話にちょうどいいのかもしれません。
なぜ奉太郎が小木先生のことを気にしたのか。
それには「氷菓」での関谷純のことがあったからではないでしょうか。
英雄として学校を去ったように見えた関谷純でしたが,その裏には声にならない叫びがありました。
小木先生もヘリが好きのイメージで奉太郎の中で固定されていましたが,雷の話からヘリが好きというのは表面上そう見えただけで,内心には違うものが渦巻いていたということに気づきます。
古典部の大先輩である関谷純のことを思い起こして先生の過去も文献から探ろうとしたのではと思います。
ヘリが飛べた,助かってくれという願いが現場に向かうヘリにこめられていたはずです。
しかし,仲間を遭難で失うという悲惨な結末に。
千反田の言えなかった言葉ですが,こちらは難解です。
叔父のことを思い起こしたというのも一つの説ですが,それだけではない気がします。
千反田が注目していたのは奉太郎の思考回路でした。
自分の中の誤解を解くために小木先生に関する真相を解こうとした奉太郎ですが,そのことは同時に辛い過去を掘り起こすことにもなってしまった。
好奇心から謎に片っ端から興味を抱き掘り起こそうとすることは同時に知らなくてもいいことを知ってしまうことになる……。好奇心が生み出す結果と,探偵役が背負う重荷みたいなものを感じ取ったのではないでしょうか。
神垣内連峰が今回の舞台になっていました。
上高地が元ネタだと思われるので立山連峰か。遭難者が多く出ているところでもあります。
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神垣内連峰は「儚い羊たちの祝宴」に収録の「山荘秘聞」にも登場します。(ちょうど読んでいたところでした)
「連峰は晴れているか」では遭難者は死亡していましたが,この作品を読むともう一つの可能性もあったのではないか……。ということを考えてしまいます。
野生時代56号は2008年6月,儚い羊たちの祝宴は2008年11月なので同時期に書かれている可能性が高いです。
(同じ神垣内連峰でも「山荘秘聞」では八垣岳の名前が出てくるのと山荘が別荘地にあるということで,八ヶ岳をモデルにしているかもしれません)
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「連峰は晴れている」は野生時代第56号に掲載。
この号は米澤穂信特集になっています。2008年のものなので入手困難になっていますが。
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えると別れたあの交差点は氷菓では重要な?w交差点かもですね。
第一話でもエンディングで里志と「えるの位置づけ」を話して別れましたし、
女帝に待ち伏せされた交差点でもありました。
「二人の距離...」でもこの交差点だったのかな?お団子食べたの。
ちなみに、えるが帰って行った方が学校で、反対方向がほーたろーの家方面で、図書館から真っ直ぐ交差点を渡ると里志の家の方みたいですね~。
自転車の件は半分アニメ脳の妄想です。
「遠まわりする雛」で千反田と奉太郎が一緒に歩く姿を楽しみに待つことにします。
今回の行き先は図書館でしたが,遠まわりする雛では千反田の行く先は決まっています。
先に行っている千反田に奉太郎が追いつこうとするという角度から考えてみるのも面白いかもしれません。
あの交差点は実際にあるみたいですね。
http://www.k2.dion.ne.jp/~mistle/impressions/mystery/kotenbu.html
以前に見つけたサイトですが,地理的な面からの考察をしていました。
記事も評価して下さり恐縮です。
氷菓はアニメ化によって盛り上がっているようですね。
わたしは近所の書店で2種類もらうことができました。
氷菓は細かなところまでよく考え抜かれて作られているのが伝わってくる素晴らしい出来になっていると思っています。原作をしっかりと理解した上でアニメならではの見せ方をしてくるところは流石です。
ミステリー部分については深く考えない人たち,キャラ萌え目当ての人たちでも楽しめるようにもなっているのはエンタメとして仕方がないかなと思っています。
壁を殴ることで青春のほろ苦さを感じ取れるというのもわかりやすくていいのではないでしょうか。
あくまでも勝手解釈の限りだと
「折木さんにはやはり叔父の面影を感じます」的な事では無いかと
ホータロー自身が言った様に余程の偶然が重ならないと
中学時代の教師と再会してヘリの話題が出る事は無いでしょう
しかし、その僅かな可能性でもその時に無神経な会話はしたくない
える曰く
博識だったのか弁が立つ人だったのか判らない叔父は
博識でも有り、己の発言に責任を持つ厳しい人で
周囲にはとても優しい人だったのでしょう
氷菓事件が解決した際にえるはそれに気付いた筈です
雛の回で地元の人からおそらくホータローにかけられる言葉
高校生のうちにこれだけ思慮深い行動が出来る男の子に
単純な好き嫌い以上の印象を持つ筈です
そして、そんな存在だからこそ今の時点で紹介したい気持ちが
強く芽生えるのだろうと、そう思います。
なるほど,奉太郎に叔父の姿を重ねているというのは興味深いです。
尋ねたら何でも答えを与えてくれる存在になっていますね。
子供の目から見ると大人は博識で凄い人に見えるものですが,同年代である奉太郎がその期待に応えることが出来ているのは凄いことだと思います。
奉太郎を墓参りに連れて行きたいと言い出したのも,叔父の面影を感じているということを考えると納得がゆく気がします。
身内のような存在に見られてしまうと恋愛関係には発展しにくいという話ですが,二人の関係はどうなるのでしょうか。
それが珍しく「自分の疑問を調べた」のかと思えば結局は小木先生という二度と会わないであろう他人の心情を慮ってのことだった……
何と言うか自分から苦労や不幸を背負い込む羽目になりそうな危うさはありますね。
で、千反田の「とても」に続く言葉ですが、最初はそんなネガティブな言葉になるのではと思ったのですが「意外な一面が見られて良かった」と言っていることからそうとも言えないかと思い直しました。
原作『クドリャフカの順番』では「核が温かい人」と言っているのでその辺りに繋がるのかもしれませんね。
ところで『Q.E.D. 証明終了』という漫画をご存知でしょうか?
ちょっとテイストは違いますが、高校が舞台で日常の謎「も」扱う推理物として通じるところもあるかなと思いまして。