氷菓 第21話 「手作りチョコレート事件」

「どこかに監禁して……それでもダメなら口にチョコを押し込んでやる!!」
Dead or Love
1年前のバレンタインデー。
里志は摩耶花のチョコを受け取らない理由として,本物の手作りではないから……。と苦しい言い訳を。
それで,来年こそは納得チョコを作って受け取らせることを宣言する摩耶花。
今年こそはとリベンジに燃える摩耶花に共感し応援する千反田。
バレンタインとは乙女の戦いの日,聖戦です
「サイインヤク」はやらないのか……
ゲームで対戦するのは中学以来。
里志の戦い方が変わっています。
勝つことだけが目的だった戦い方から派手に戦って散るスタイルに。
完成した摩耶花のチョコは直接渡すのではなく,部室に置いておくと。
千反田家では本当に親しい人にはお歳暮をあげないので,チョコも……と千反田。
原作では最初からあげるつもりはなかった。チョコの話題になっている以上,奉太郎にチョコを渡さない言い訳としてそう言ったという印象だったのですが,アニメだと本当に親しい人だからあえてあげない(意味深)という感じになっています。
そして放課後に。チョコを巡る攻防がスタートです。
16:20 部室に向かう里志。奉太郎は図書室に。外はみぞれです。
千反田は事の顛末を見守ろうとチョコの見張りを。
16:53 千反田が図書室の奉太郎のところに。
里志が部室に現れないと。
部室に戻る千反田ですが,チョコが盗まれたと。
自分が部屋を空けたせいで……と自分を責める千反田。
奉太郎には直接関係がないことですし,みぞれもあがって帰る絶好の機会なのに,自分を責める千反田を放っておけず手伝います。
部室に行ける道は一つだけ。
そこの階段に工作員が。
ポスターを貼っていますが「下げすぎたね」と里志。右下がりになる前の張り方を知っています。
千反田が部室に戻ってきたのは5時過ぎ。16:45に里志を探しに行った千反田。
千反田は部室に戻る途中,あの階段のところで里志と出会い,二人で部室に向かい,チョコが無くなっているのを見つけます。
千反田が里志を探しに行ったときには工作員はポスターを広げていたと。
それで工作員に話を聞きに行くことに。
「ここを通ったやつ? 覚えているよ。全部で3人」
その3人とは奉太郎,千反田,里志。
ポスターの形が微妙に違う気が。
ということで,犯人は部室からチョコレートを盗んでからまだ階段を降りていない。
それで,古典部よりも上の階の部,天文部を探ることに。
天文部と言えばこの方。沢木口先輩です。
今日は黒いリボン。誰にもチョコレートをあげていないですね。
いきなり犯人扱いする千反田。摩耶花のことで周りが見えなくなっています。
席を外した人はいると。女部員の中山も席を外しています。
ということでチョコを盗んだ犯人を推理をする奉太郎。着ているコートが探偵ぽいです。
そこに戻ってくる摩耶花。
チョコが盗まれたことを伝える千反田。
「そっか,盗まれちゃったか……」
盗まれたことをそれほど気にしていません。
気にしている千反田を気遣っていました。
でも明日から摩耶花に会わせる顔がないとチョコを盗まれたことで自分を許せない千反田。
その涙を見て,必ずチョコを取り戻して里志に渡すと千反田に約束を。
その奉太郎の言葉を信じて帰る千反田。
天文部の中山が足にくくりつけてチョコを隠して持ち去ったというのが奉太郎の推理。完全に工作員です。
約束通り,摩耶花のチョコを里志に渡す奉太郎。
チョコを盗んだのは里志で,巾着袋の中に隠していました。
降り始めた雪と日が落ちた薄暗さがほろ苦い結末を示しています。
千反田が里志を探しに行った隙に部室に行き,チョコを回収しますが,袋に入らないのでチョコを割る里志……
自分は第一人者にはなれない。なろうとするのを止めたと里志。
勝ちにこだわるスタイルがつまらなかったので,勝ちにこだわらずに楽しむように。
一つのことにこだわることを止めた今,摩耶花のことにこだわっていいのか悩む里志。
摩耶花が魅力的なだけに,今のような一線を置いた付き合い方ができなくなることを恐れています。
摩耶花の気持ちに応えたいという気持ちがありますが,そうすると摩耶花が自分のことをずっと想ってくれているだけに,その気持ちを受け入れると,摩耶花にこだわる,摩耶花のことだけに縛られることになっていまいます。
今の気に入っている自分のスタイルを捨てると,昔のゲーセンでの対戦の時のような勝ちにこだわる嫌な自分に戻ることを恐れています。
そんな自分の考えていることが自己中,摩耶花のことを考えていないとわかっている里志ですが,今の気楽さを手放したくない思いがあるので,このまま保留状態を続けることを願っています。
でも,その結果摩耶花だけではなく千反田も傷つけてしまいます。
摩耶花を追いかける千反田。
こちらはまだ夕焼けが残っていて雪も降っていません。摩耶花は里志ほど思い詰めていないことが示されています。
チョコを盗んだ犯人を知っていた摩耶花。
里志の答えが「保留」であることに気がついていました。
千反田を今回の件に巻き込むことによって里志の退路を塞いでいた摩耶花。
チョコの行く末が気になっていた千反田。千反田の好奇心からは誰も逃げられません。
結果的に追い詰められた里志はああいう行動に出てしまうわけです。
それでも里志のことがまだ好きだという摩耶花ですが,里志もその気持ちに応える目処がついています。
摩耶花に電話をかけていました。
次回は「遠まわりする雛」
ついにこのエピソードが。
里志の不器用さがほろ苦い青春しています。
言いたいこと伝えたいことがあるのにそれを上手く言葉や行動で示すことができないため,チョコを盗むという回りくどい方法をとってしまいます。
文化祭の時の田名部先輩とよく似ています。
親しくて近い距離でありその関係を壊したくないだけに,面倒な方法を。
その里志の葛藤が表情によく表れていました。
今回はそうしたそれぞれの不器用さが上手に描かれていました。
千反田は摩耶花の期待を知っていただけに,責任を感じていて感情移入しすぎて回りが見えなくなっています。
摩耶花も一年前の答えを直接聞けないだけに,チョコを部室に置いて,それを受け取るかどうかで判断しようとしています。
千反田に協力してもらうことによって,里志がチョコを受け取るかどうかが気になってしかたない千反田。自分では結果を確かめられなかったとしても千反田ルートで結末を知ることができます。
バレンタインという恋のイベントで葛藤するそれぞれの姿の描き方が面白かったです。
そんな中でもマイペースだった奉太郎ですが,千反田が責任を感じている,泣いているということで事件に介入します。千反田のためなら省エネ主義を捨てています。そんな奉太郎を信頼する千反田との関係も見所がありました。
こうして1年を通して二人の関係,距離感が変わってきているところで次回のエピソードなのでとても楽しみです。
ミステリー的には動機を無視して犯行の可能性だけを追求していました。
奉太郎も摩耶花も犯人がわかっていました。
千反田を納得させられる理由だけを示せばいいので,どう見てもチョコを盗む動機がない中山さんを犯人にこじつけます。
犯人を見つけ動機を解明するのが目的ではないというのも面白いです。
そこに「三人」,通った人の延べ人数ではなく,通った人が何人なのかという一種の叙述トリックが使われていました。
この件で里志を悪くいう人が多いと思うのですが,里志も里志なりに大変です。
ずっと好意を示されている相手から結論を求められています。摩耶花の性格を考えると対処の仕方を間違えれば険悪な状態になりそうだし。
それに自分の能力にもコンプレックスを感じています。今回の件でもうまく立ち回ろうとしながらも見透かされていたし。
こうして恋愛方面にも話が進むことによって里志と摩耶花,奉太郎と千反田の今後が楽しみになります。
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加えて周囲が高評価する程には自分に対して自信が無い
無責任に責める気持ちにはなれません、相思相愛なんですけどね。
ホータローは自称省エネ主義ですが怠け者を自称した事は無いですね
取りかかった事は最短ルートで解決試みるだけで。
今回、摩耶花から千反田への説明が作中で描かれたのも
原作無視とかでは無く良い演出だと思います。
その事情を知った上でホータローの電話を聞くのは意味が違うし
次回への繋がりでも説明の重みが変化しそうです。
登校途中のやりとりは「もう結婚しちゃえ」とか思いましたけど(笑)
以前の田辺先輩に会長から壇上でかけられた「お疲れ」の言葉ですが
今回の古典部女子のフォロー
温泉合宿のラストで鼻緒が切れた妹を背負う姉のカットと併せ
もう確信に近いですが
アニメでは原作でどちらとも読める箇所(読者の想像部分)を
全て救いの有る方向で描いてますね。
一人だけ印字中出身の千反田さんは放置されなかったし
貸し借りを上手く言い出せない世代の姉妹は本当は仲良し
文化祭には間に合わなかったけど
その後何らかの形でクドリャフカは描かれたのだと思います。
次回、雛がどう描かれるのか「気になります!」
える「私の家では本当に親しい人…..」のくだりは
原作のようにカラッとやって、周りにいる上級生にクスッと笑われて、
ホータロー「さいで^^;」
って感じを予想していたんですが、ここ数話の流れから今回の改変も良かったかと^^
「連峰」の時は右側にホータローがいる時でも間に自転車を入れて歩いてましたが
今回、自分とホータローの間に自転車を入れずに並んで歩いてるのも○
京アニは距離が近くなったことをホント細かいことでよく描けてます。
上記のセリフをあそこでわざわざ言わせる改変をしたのは、
ホータロー君、そういうことですよ。と。
摩耶花「ちーちゃん、好きな人いないの?」
この後、摩耶花が驚いた表情をみせるのは??
「気になります!!!!!」 ……摩耶花に言っちゃった?^^
里志の行動「食べる」以外で「2・14チョコを割る」のは許されない(`・ω・´)
まぁ、結果的にえるとホータローが関わったことで里志が電話したわけですから許すとしようw
えると摩耶花は結構遅い時間までケーキ食べてたんだろうな^^
あの時間まで制服だっし、ホータローと里志も…いい友達です^^
最後に
「里志、通学用カバンはどうした!w」
里志は奉太郎と比べることで自分を過小評価しているような感じがしますね。
ハイレベルな人たちが集うあの学校にいるのが悲劇なのかもしれません。
なるほど,「お疲れ」の件興味深いです。
ほろ苦い結末の話が多いのですが,その中から救いとなる部分をピックアップしているようですね。
原作のイメージを壊さないようにしながらも学園青春風の味付けをしてきています。
クドリャフカが何らかの形で描かれていたらいいなと思います。
チョコをもらえなくて落ち込む奉太郎も見てみたかったですね。
自転車でそこまで細かな描写がなされていたとは。
確実にふたりの距離は縮まってきていますね。
次回のラストをどのように描いてくれるのかが楽しみです。
摩耶花の「好きな人は?」は回収されることになるのか。
見直してみたら,里志は鞄を持っていませんでしたね。
大事なものはチョコレートだけだったのか。
実はもう一つ書きたいことがあったのでコメさせていただきます。
「遠回りする雛」では、えるがホータローに自分の住んでいる世界を見せる行動に出るわけですが、
これがどうも自分の中ではしっくりこなかったんですよね。
学校のクラブ活動で知り合って、「ちょっといいな♥」と思った男の子に自分の事みせるかな?と。
原作を読んだのは随分前なのでうろ覚えなんですが、突然、えるがホータローに近づいて行ったように感じました。
京アニのスタッフの方々が私と同じように思ったかは知りませんが、
今回の話はその疑問を埋める十分な「えるとホータローの手作りチョコレート事件」になってました。
チョコレートがなくなって、あちこちを探しても見つからず、図書室にいるホータローに
助けを求めに行くわけですが、ホータローの顔を見るやエルの手足は震えます(ここすごく重要と思う)。
それを見たホータローは理由を聞き、「手伝う」と伝えるとえるは安堵の表情をうかべます。
えるの中でのホータローの大きさをうかがい知ることができます。
廊下で工作部の人の話を聞くと、また、我を忘れて沢木口先輩に直接的表現を発してしまいますが、
ホータローに抑えられます(里志は当然大慌て)。
そして部室に戻って、摩耶花の表情でえるは自分をまたまた抑えられなくなりますが、ホータローに止められます。しかし、それでも行こうとするえるを初めてホータローは手首を掴んで止めますが、
えるの2度目の涙を見ることとなります。
1日度目のラストシーンとは全く違う涙を見てしまい、ホータローの中のスイッチが入ります。
「自分に全てを預けてくれ」と。「ただ、お前が居るとできない」とも。
省エネ主義を忘れさせるくらいホータローの中でもえるは大きな存在となっていたようです。
クシャの頃のえるはここでふてくされて「卑猥な話」を持ち出されてますが、
ここでもえるの中でのホータローの大きさを描いてました。素直に任せます。
里志はえるを傷つけます。摩耶花もえるに謝っています。えるも沢木口先輩に直接的表現を使ってしまいます。
ホータローだけが里志にチョコを手渡し、誰も傷ずに里志に次に進むよう促します。
そして、最後の電話のシーン。
摩耶花のフォローで真相を知ったえるですが、ホータローにお礼を言う時、
えるは受話器にそっと左手を添えます。いい絵です。
文字での私の想像力の無さを補ってくれたいいお話(絵)でした。
安心して最終回「遠回りする雛」を見れます。
奉太郎のことですから全く気付くことなく自然消滅したみたいな感じならありそうかなとも思ったのですが……
原作では里志と摩耶花の関係が明かされる話というイメージが強かったのですが,アニメではちょっとした仕草や表情で人間関係や感情の動きを描いてくれていますね。
最初の氷菓事件,文化祭の時,そして今回の事件と一緒の時間を過ごしお互いに対する認識を深めてゆくことによって千反田と奉太郎の関係も変化してきています。
特に今回はえるが奉太郎の前で自分の弱いところや強い感情を見せていました。外行きの顔以外も見せるようになっていますし,奉太郎がえるを掴むという関係の変化が発生しています。
これまでは奉太郎を掴むのはえるでしたが,奉太郎が自分から他人のために動く,えるのためにアクションを起こすようになったというのは大きいものがあると思います。
二人の恋愛面が注目されがちですが,関係の変化を丁寧に描いてくれているので,より感情移入できるようになっているように感じます。
里志も奉太郎も高校生とは思えないほど大人びていますね。なかなかそこまで達観できないと思うのですが。
米澤さんのことなので普通のラブコメには期待できないですね。結ばれるとしてもほろ苦さを背負っていかなくてはならない展開になりそうです。
チョコ事件での摩耶花の行動を見ると,漫研でのことがわかるような気がします。
器用にうまく立ち回ることができないゆえに損をしているようにも見えますが,そのまっすぐに気持ちをぶつけてゆくところが摩耶花の魅力ではないでしょうか。
凡人には凡人の気持ちがよくわかるというか,アニメでようやく里志の考えていたことがわかるようになってきた気がしています。
摩耶花と奉太郎は長い付き合いなので,過去に色々とあったようですね。
野生時代に載せられた古典部の最新話で摩耶花が奉太郎を邪険に扱う理由が語れているようですが,甘酸っぱい展開は二人にあったのか。個人的にはあって欲しいのですが,米澤さんはラブコメ作家ではないので脳内で補完するしかなさそうな気がします。
氷菓は京アニがアニメ化するという話を聞いて原作をまとめ買いしたのですが,米澤作品にすっかりはまることになりました。
アニメも素晴らしい出来だったので記事も楽しく書くことができました。
更新量を減らしながら何とか続けてきたのですが,秋アニメからは1話ごとの感想は止めようと思っているところです。時々は更新できたらと思っているのですが……