白鳥 士郎 「のうりん」 感想
![]() | のうりん (GA文庫) (2011/08/12) 白鳥 士郎 商品詳細を見る |
のうりん 1巻です。
書店で「ガイアが俺にもっと耕せと囁いている」というメンズナックルネタの帯を見て,面白そうだなと思ったのですが,当時ラノベを読む時間が無くなってきていたのでスルーしました。
その後も面白いという声を聞き,お勧めされていて気になっていたのですが,アニメ化のニュースを聞いてまとめ買いしてきました。
読んでみたところ期待以上の面白さでした。読みやすくあっという間に読んでしまいました。
スタイル的には「はがない」に近く,「バカテス」的な味付けがされているのですが,ハーレムものではなく農業を軸にしたワイルドなハイテンションコメディです。笑いの破壊力高いです。
ギャグ系でパロネタ多いし下品なのですが,農業というこの作品の柱になる部分をしっかりと書いているので,それほど不快感を与えません。農業に対する熱い思いとギャグがシンクロしています。

http://www.no-rin.tv/
アニメの公式サイトも出来ています。若旦那がラブリーです。
ネタバレ含むので残りの感想は追記で:
「のうりん」の特徴として作者が農業のことをよく勉強しています。単なるモチーフとして農業を取り上げているのではなく,農業の表向きの部分だけではなく裏の部分,抱えている問題点まで踏む込んでいます。
作者紹介のところで,「この作品を書くために一年間農業高校を取材しました」と。あとがきでもたくさん取材しいろんな人から話を聞いたことが書かれています。
表面的な部分だけではなく,農作業の大変さとか連作や化学肥料によって死んだ土のことをしっかりと書いています。
農業のヘビーな部分を取り上げながらもお馬鹿なことを思い切り書いてくれているそのバランスとギャップが面白いです。
アニメ,マンガ,ネット関係のネタが多く,暴走気味なところもあるのですが,わたし的には楽しめました(元ネタがわかるとさらに楽しめます)。ベッキーなんて残念すぎるのですが憎めません。
章ごとにシチュエーションコメディ的な構成になっているのですが,個性的で濃いキャラの登場人物を面白くおかしく動かしてくれています。
ネタ的に下品なところもあるのですが,農作業という汚いところも臭いところもあるものを題材にしているだけに許容範囲なのではと思います。
主人公である畑耕作のアイドルに対する熱狂的な思いはドン引きものなのですが,その熱愛する草壁ゆかがアイドルを辞めて田舎の農業高校に転校してくることにより,幼馴染みの中沢農との三角関係ラブコメも展開されます。
畑耕作はアイドルオタクで性癖もちょっとアレでヒロインの好意に気づいていない鈍感で残念な人でもあるのですが,農業に対する知識は豊富で経験も十分にあります。
そんな耕作が東京に行こうとしていることは,今後農家の跡取り問題や耕作の過去のことが語られるのではと思っています。
農と林檎は田舎娘とアイドルと対照的なヒロインなのですが,農は名前の通り田舎での農業を象徴していて,林檎は都会での華やかな生活を象徴しています。
耕作は都会に憧れていて田舎から出て行きたいと思っていますが,農業を愛する気持ちも持っています。
リハビリのような形でやってきた林檎だけにいずれ華やかな舞台に帰る日が来るとは思うのですが,そのときに耕作がどういう選択をするのかに注目です。「のうりん」というタイトルからして農業を最終的には選ぶことになるとは思うのですが……
こうした都会と田舎のギャップや抱えている問題も避けることができないだけに今後も取り上げてくれるのではないかと思います。
林檎がなぜ田舎の農業高校にやってきたのかという謎については本文中では明かされません。続巻を想定した構成になっていて,編集側もヒットすることを確信して送り出したのではないでしょうか。
林檎については過去に耕作との接点があったように思えるのですが,最後のおまけでは農と接点があったようなことが?!
農と林檎のダブルヒロイン体制になっていますが,いまのところ農の方がお気に入りです。方言ヒロインいいですね。赤カブ検事シリーズが好きだったので親しみを感じてしまいます。
国民的アイドルだった林檎が電撃引退してやってきたというのに周りの反応が普通の転校生に対する扱いみたいなのが若干気になりましたが……
耕作も熱狂的なファンだというのに同居生活が始まっても冷静すぎます。まあアイドルものではなく農業ものなので深くは突っ込まないことにします。
次巻では他のクラスの連中も登場するということなので楽しみです。どんな濃いキャラが登場してくるのでしょうか。
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